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【これだけは覚えて!】正常心電図

 

「ザックリ」学ぶ医療の教科書シリーズ!


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ドクター先生

ここまでの2回を通して、「心電図が何か」ということと、「心臓の構造」について理解できたかな?

今回は「 正常心電図 」について解説するよ!

 

 
ナース看護師

やっと本命の心電図ですね!

正常心電図、ということはもっとも基本的な波形ということでしょうか?

 

 
ドクター先生

その通りだね!

正常波形がわかっていないと、どんな波形が異常なのか分からない からね。

 

 
ナース看護師

確かにそうですね!

【おさらい】刺激伝導系の流れと心電図の描画

刺激伝導系

前回で詳しく解説しましたが、心臓を動かすために電気刺激を伝えるための仕組みを「 刺激伝導系 」といいます。

この刺激伝導系の流れをおさらいしておきましょう。

刺激伝導系は、まず初めに「 洞結節 」と呼ばれる部分から電気刺激を発生するところから以下のような経路を辿ります。

刺激伝導系

心電図は、この刺激伝導系を流れる電気を捉えて描画するもの*です。

 

*正確にはこの電気によって興奮した心筋の電位ですが、混乱するので今回は刺激伝導系に流れる電気を捉えると考えてください

 

心電図の描画

実際の心電図測定では、刺激伝導系に流れる電気を捉えるために電極を体の表面に装着します。

電極の貼る位置や個数は、心電図の取り方によって異なってきます。

 

心電図電極の貼りかたや、それぞれの名称などは次回わかりやすく解説しますので、今回は

電極と電極の間に流れる電気を見ているんだなぁ

と軽く考えてください。

 

電極のプラス側に電気が近づいてくると心電図上では上側(正方向)に表示され、離れていくと下側(負方向)に表示されます。

イメージとしてはこんな感じです。

ボール③ボール④

 

体表に電極を貼り、ノイズを除去すると常に筋肉の動きがある心臓の電気的活動を心電図として得ることができます。

難しそうに見える心電図も、要は近づいてきたら上方向、離れていけば下方向に表示されているだけです。

 

【これだけは覚えて!】正常心電図

最初に結論となる正常な心電図を見ておきましょう。

正常心電図

心電図の波形にはPQRSTと呼ばれる波形が存在し、それぞれの時間や間隔に正常値が設けられています。

波形に異常があったり、間隔が長かったりすると「 不整脈 」と言われる疾患に分類されます。

 

正常心電図を理解するために、PQRSTの波形の成り立ちを刺激伝導系に流れに沿って見ていきましょう。

最もよく使用される「Ⅱ誘導」で解説していきます。

II誘導は心臓を下から見るような心電図測定の方法で、流れる電気に沿って見ることができるため、もっとも波形が綺麗に、かつ大きく表示することができます。

 

II誘導で見た時、心尖部に向かう電気は上方向、心尖部方向から心臓上部に向かう電気は下方向に描画されます。

イメージとしてはこのような形ですね。

心電図超基本

ざっくりとしたイメージができたところで、刺激伝導系の流れに沿って心電図がどう反応するのかを追っていきましょう。

 

①洞結節〜洞房結節

まず洞結節から出た電気は、心房全体に広がり、房室結節に向かいます。

洞結節から房室結節への流れは、II誘導で見た時には電気が近づいてくる流れですので、心電図上では上向きに表示されます。

P波

ここが心電図での「 P波 」と呼ばれる部分になります。

 

P波は簡単に言うと、

心房の興奮する過程を表す波形

です。

 

②房室結節での遅い流れ

洞結節から房室結節に入った電気は、房室結節内では比較的ゆっくりと進みます。

この電気の流れは一応向かってくるように見えるのですが、実際の心電図は筋肉の興奮を見ているため、 房室結節内の電気の流れではあまりに小さく、波形として現れません

PとQの間

このP波の後に平坦になる部分とP波を合わせた時間を「 PQ時間 」もしくは「 PQ間隔 」と言ったりします。

 

③房室結節 〜ヒス束 〜 右脚・左脚〜プルキンエ繊維

房室結節から出た電気は、その後ヒス束に入って右脚、左脚と分かれます。

QRS波

この流れは、II誘導で見た時には電気が近づいてくる流れですので、心電図上では上向きに表示されます。

そして、それぞれの脚からプルキンエ繊維、心筋細胞へと刺激が伝播していき、心室の収縮が発生します。

この部分を「 QRS波 」と言い、

心室の興奮を表す部分

です。

 

④心筋の興奮からの復帰

一旦刺激伝導系から電気刺激を受けて興奮した心筋細胞は、一定の時間を経て興奮状態から興奮していない状態に戻ります。

具体的には、 心室細胞の興奮がさめる段階 を表しています。

その過程が「 T波 」と言われる部分です。

T波

 

この後に「 U波 」と呼ばれる波が発生することがありますが、陰性でなければ特に気にする必要はありません。

 

ここで鋭い方は、

あれ?心房の興奮が回復する過程はどこ??

と思われたかも知れません。

 

心房の興奮が回復する過程も、もちろん電気的信号として取得可能です。

しかし、その部分はQRS波に被ってしまう為、見ることはできません。

 

まとめると

 
ナース看護師

つまり、正常心電図は…

PQRSTの波形からなる

P波は心房の興奮を表す

QRS波は心室の興奮を表す

T波は心室の興奮からの回復を表す

ということですね!

 

 
ドクター先生

その通りだね!

これで正常心電図がわかったね。

次は心電図を取得する方法を解説するよ!

 

 
ナース看護師

12誘導ってやつですかね?

次回もよろしくお願いします!

 

今回は正常心電図について解説しました。

それぞれの波形の成り立ちがわかるだけでも、少し心電図に対して抵抗がなくなるかと思います。

 

実際にII誘導を見たときに、

お、この心電図は正常だな!

と判断できれば今回の内容はバッチリです。

 

しかし、現実にはII誘導だけでは判断が難しい場合や、他の誘導も加味して判断しなければならない場面があります。

そこで、次回はその心電図の誘導の種類について解説します。