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医療での「カルシウム」についてわかりやすく簡単に解説!

「カルシウム」に関する基準値
血漿カルシウム濃度

約 1.1 〜 1.3 [ mmol / L ]

(二価なので 2.2〜2.6 [ mEq / L ])

細胞内カルシウム濃度 0.0001 [ mEq / L ]
体重に対するカルシウムの割合 約 1 %

「ザックリ」説明

 
ドクター先生

今回は「カルシウム」について解説するよ!

 

 
ナース看護師

骨作っている物質ですよね!

お母さんによく「牛乳飲みなさい」って言われてました…

 

 
ドクター先生

みんなが通る道だね。

ナースちゃんの認識の通り、骨とカルシウムは密接に関わっているんだよ。

 

 
ナース看護師

でも、骨を作っているということ以外はあまり知らないですね。

他にはどういう役割を持っているんですか?

 

 
ドクター先生

カルシウムがなければ、体を自由に動かすことが出来ないんだよ。

それほど深く、細胞の活動というものに関わっているんだ。

 
ドクター先生

怪我をした時にカサブタを作ることにもカルシウムが必要なんだ。

他にも、様々なところでカルシウムは生体の活動に関与しているんだよ。

 

 
ナース看護師

カルシウムって骨以外にも、すごく重要なんですね!

もっと詳しくカルシウムについて教えてください。

 

 
ドクター先生

じゃあカルシウムについて詳しく見ていこうか!

「カルシウム」を学ぶなら、まずこの一冊!

生体内のカルシウムとは

カルシウムは、体重のおおよそ1〜2%程度含まれており、体の中で最も多いミネラルです。

体内に存在するカルシウムの99%は、骨や歯などの硬い組織を構成しています。

細胞の中を「細胞内」、細胞の外を「細胞外」とした時、カルシウムの残り1%はほとんどが細胞内に含まれており、ほんの0.1%ほどが細胞外に存在します。

カルシウムの割合

体全体から見た時、細胞外に含まれるカルシウムの量はとても少ないですが、その濃度は非常に精密に調節されています。

血中カルシウム濃度の正常値は約 1.2mmol / L程度ですが、ここから数%レベルで大きく上下することはほとんどありません。

これはカルシウムが細胞や血液にとって、非常に重要な働きを担っているためです。

特に神経細胞などではカルシウムに対して非常に過敏であり、細胞外のカルシウム濃度が正常値から外れるとすぐに神経系に症状が現れます

カルシウムの厳密な調整には、カルシウムのほとんどを持っている骨が重要な役割を果たしています。

細胞外のカルシウム濃度が低下すると、骨の中からカルシウムを放出し、逆に細胞外のカルシウム濃度が上昇すると過剰になったカルシウムを骨の中に回収して貯蔵することで、細胞外のカルシウム濃度を維持しています。

カルシウム濃度の維持

カルシウムは主に食物や飲み物から摂取しており、摂取されたカルシウムは小腸から吸収され、細胞外の水である細胞外液を介して骨や細胞内に運ばれていきます。

カルシウムは小腸でも吸収しにくい栄養素ですが、ビタミンDにより腸でのカルシウムが促進されています。

ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が少なくなるため、細胞外液中のカルシウム濃度を維持するために骨の中のカルシウムをどんどん排出してしまい、骨がスカスカになっていきます。

カルシュウムはビタミンDの他にも、副甲状腺ホルモンやカルシトニンといったホルモンによって調節されています。

 
ドクター先生

細胞内と細胞外では、カルシウムは細胞内の方が多いですが、

濃度としては細胞外の方が高い

ということを覚えておきましょう!

カルシウムの働き

カルシウムの主な働きは、以下のようなものがあります。

骨や歯の形成

細胞の興奮

血液凝固

一つずつ解説していきます。

骨や歯の形成

骨や歯は、カルシウムがその主成分となって形成されています。

骨は常に破壊と形成を繰り返しており、その際にカルシウムの放出と吸収を行っています

これが、前の章でも説明した細胞外液中のカルシウム濃度を調節する方法に関わっています。

そのため、細胞外液中のカルシウム濃度が長期間低い状態が続くと、骨の破壊が進んでしまい、骨粗鬆症といった骨が弱くなってしまう病気に繋がります。

細胞の興奮

カルシウムは細胞の興奮に深く関わっています

興奮とは、細胞が刺激によって休止状態から活動状態に切り替わること、と考えて下さい。

指を動かすという単純な作業でも、脳から神経細胞に興奮が伝わり、最終的に筋組織に指を動かすのに必要な筋肉を興奮させることで成り立っています。

たくさんある細胞の一例として筋細胞では、カルシウムは筋肉の収縮と弛緩(力を入れたり抜いたりすること)に深く関わっているため、細胞外液中のカルシウム濃度が異常に増えると力が入らなくなったり、逆に異常に低いとずっと力を入れた状態から戻せなくなったりします。

後ほど解説しますが、特にカルシウム濃度が低くなった場合にはその症状は顕著に現れます

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血液凝固

怪我をした時にカサブタができて血が止まる、ということは皆さんご存知かと思います。

カサブタのように、血液が固まることを「血液凝固」と言います。

血液凝固には「凝固因子」と呼ばれる血液を固めるのに必要な要素が13種類ありますが、カルシウムはその凝固因子の一つです

輸血製剤などではカルシウム濃度を下げることで、長期間血が固まらないように調整されています。

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高カルシウム血症

カルシウム濃度が正常値よりも高くなることを「高カルシウム血症」と言います。

高カルシウム血症は軽度では症状が出無いことも多いですが、一般的に言われている初期の症状としては、便秘や吐き気、嘔吐、腹痛などが存在します。

重症化した場合には幻覚や昏睡といった神経の異常だけではなく、不整脈や腎臓での結石形成などが起こり、最悪の場合死に至ることもあります。

高カルシウム血症はそれ単体で起こるということは稀なため、治療の方針としては原因となっている症状を取り除くことが主な手段です。

カルシウム濃度を下げる必要がある場合には、カルシウムを下げる薬剤や輸液を行います。

また、さらに強力な治療方法として透析を行うという方法もあります。

低カルシウム血症

カルシウム濃度が正常値よりも低くなることを「低カルシウム血症」と言います。

軽度の低カルシウム血症では症状がないことも多いですが、重度の低カルシウム血症になると細胞が興奮しやすい状態になるため、筋肉の痙攣や筋肉が強張ったまま動か無いと言った重篤な症状が発生します

低カルシウム血症を引き起こす疾患には以下のようなものがあります。

・副甲状腺機能低下症
・偽性副甲状腺機能低下症
・ビタミンD欠乏症
・腎不全

慢性的にカルシウム濃度が低い場合には、さらに肌荒れがひどくなったり、爪が割れやすくなる、骨が折れやすくなるなどの症状が現れます。

低カルシウム血症の治療としては、高カルシウム血症の場合と同じで、原因を解決することが重要です。

カルシウム濃度を上げる方法としては、経口もしくは静脈からのカルシウムの投与を行います。

まとめると

 
ナース看護師

つまり、カルシウムは

主に細胞の活動、骨の形成、血液凝固に関与している

カルシウム濃度は骨が中心となり調整し、その調整にはいくつかのホルモンが関与する

カルシウム濃度異常では、その原因を探すことが重要

ということですね!

 

 
ドクター先生

さすが、その通りだね!

これでカルシウムには関して理解が深まったね。

また分からないことがあったら聞いてね。

「カルシウム」を学ぶなら、まずこの一冊!