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医療での「嫌気的代謝」についてわかりやすく簡単に解説!

「嫌気的代謝」に関する基準値
動脈血乳酸濃度 4.2~17.0 mg/dL
動脈血pH 7.35〜7.45
細胞内pH おおよそ7.0
BE 女性:-2.3~2.7 mmol/L
男性:-3.2~1.8 mmol/L
HCO3- 24mEq/L
 
ドクター先生

今回は「嫌気的代謝」について解説するよ!

 

 
ナース看護師

「嫌い」っていう文字が入っているだけで、体に身体に良く無さそうですね。

どういう意味なんですか?

 

 
ドクター先生

嫌気的代謝は、

酸素を使用しないでエネルギーを作ること

という意味なんだ。

 
ドクター先生

身体に良くないかどうかは場合によるかな。

 

 
ナース看護師

酸素って呼吸で取り入れてますよね?

呼吸しなくてもエネルギーを供給できるなら、ずっと水中で息を止めていられそうなものですが…

 

 
ドクター先生

面白い意見だね!

でもこの嫌気的代謝で得られるエネルギーは、酸素を利用する「好気的代謝」よりも圧倒的に効率が悪く、持続可能な時間も短いんだ。

 

 
ナース看護師

そうなんですね!

もっと嫌気的代謝について教えてください!

 

 
ドクター先生

じゃあ詳しく解説していこうか!

「嫌気的代謝」を学ぶなら、まずこの一冊!

嫌気的代謝とは

嫌気的代謝(もしくは嫌気性代謝)は、

酸素を使用しないでエネルギーを作ること

という意味です。

酸素を必要としないことを「嫌気的」または「嫌気性」と言います。

代謝は大きい意味では「体内で発生するすべての化学反応」を指しますが、嫌気的代謝という言葉の中では「エネルギー産生」をピンポイントで表していると考えて間違いありません。

酸素と利用するとしない

エネルギーという抽象的な表現をしていますが、これは「ATP」の事を表しています。

ATPは「アデノシン三リン酸」のことであり、生体内での消費と再生成を繰り返されることから、「細胞のエネルギー通貨」と呼ばれています。

好気的代謝と嫌気的代謝

ATPを生成する方法は、

酸素を利用する「好気的代謝」

酸素を利用しない「嫌気的代謝」

の2種類に分けることができます。

ATPはエネルギーであるため、それぞれの方法で生み出されたATPのことを「好気的エネルギー」、「嫌気的エネルギー」と呼んだりします。

今回は嫌気的代謝に焦点を当てて解説していきます。

身近に存在する嫌気的代謝

通常、嫌気的代謝は好気的代謝が成り立たなくなった場合の予備手段として機能しています。

身近な例としては「100m全力疾走した時」を想像してみてください。

軽い運動であれば、酸素を利用した好気的代謝にてどんどんエネルギーを産生することができますが、100m全力失踪などの強度が強い運動になると、酸素供給が間に合わず、糖を分解することによる嫌気的代謝でもエネルギーを産生するようになります。

この時、嫌気的代謝の結果生まれるのが「乳酸」です。

全力疾走の後にズッシリと足が重く感じるのは、乳酸が筋肉に蓄積しているため(=嫌気的代謝が行われたため)です。

嫌気的代謝の始まり

少し難しくなりますが、嫌気的代謝から乳酸が生まれるまでの流れについて、詳しくみていきましょう。

イラストで簡単にイメージをお伝えしますので、ざっくりと見ていきましょう。

酸素を利用する好気的代謝では、糖や脂質、タンパク質からそれぞれの経路で作り出した「アセチルCoA」という原料をもとに「TCA回路」という分解工場を通り、「電子伝達系」という酸素を燃料にした生産工場で大量のエネルギー(ATP)を産生します。

ATP産生

しかし、酸素が供給されない場合、「電子伝達系」という生産工場を稼働することができず、エネルギーを産生することができなくなってしまいます

そのままではエネルギー不足になってしまうため、なんとか体は別の方法で作り出そうとします。

そこで、糖を分解してアセチルCoAを生み出す過程である「解糖系」という前処理場にてエネルギーを生み出そうというのが「嫌気的代謝」です。

解糖系と嫌気的代謝

解糖系は、糖を分解して「ピルビン酸」と呼ばれるアセチルCoAの材料を作るための前処理場であると理解していれば問題ありません。

ピルビン酸は、好気的な環境では「CoA」と呼ばれる物質と引っ付き、アセチルCoAに変化します。

重要なのは、ピルビン酸を作る過程で少量のエネルギーを産生できるということです。

しかし、このままでは好気的代謝の時と同じで、アセチルCoAの出荷先がないため、いずれ解糖系という前処理場の在庫がいっぱいになってしまい、エネルギーを作ることができなくなります。

そこで、アセチルCoAを「乳酸」と呼ばれる物質に変換して細胞外に出荷することで、引き続き解糖系を稼働できるようにしています。

これにより、少量ではありますが、嫌気的状況下でもATPを産生することができるのです。

解糖系でのATP産生

しかし、嫌気的条件でのATP供給は、糖の分解という目線から見た時に非常に非効率的であり、また持続時間も数分程度しかありません

そのため、長時間のエネルギー供給には不向きであり、好気的代謝を行えない環境が長く続いた場合、細胞の生存が危なくなっていきます。

嫌気的代謝から好気的代謝への転換

一定期間の後に、嫌気的代謝から好気的代謝に戻った場合、蓄積した乳酸はピルビン酸へと変換され、「TCA回路-電子伝達系」の分解工場、生産工場を経由して大量のエネルギーを産生します。

この時、過剰に産生されたエネルギーは、余ったピルビン酸の3/4を再び出荷前の「糖」の状態に戻すことに使用されます。

つまり、嫌気的代謝で作られた乳酸は生体内で失われるわけでは無く、エネルギーもしくは糖に変換されて、再び貯蔵されるのです。

まとめると

 
ナース看護師

つまり、嫌気的代謝は…

酸素を使わないエネルギー産生のこと

エネルギーの代わりに乳酸を産生する

ということなんですね。

 

 
ドクター先生

その通りだよ。

かなりマニアックな用語で奥が深いから、興味があるならもっと深掘りしてみてね!

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