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pH

いつも通り、最初に関連する基準値を置いておきます。

個人的には、基準値はググればOKだと思っていますので、頑張って覚える必要はありません。

今は見なくていいよー、という方はスルーしてください。

「浸透圧」に関する基準値
ちょこっと解説 基準値
動脈血pH 動脈血pHの基準値 7.35〜7.45
細胞内pH 細胞内pHの基準値 おおよそ7.0
BE 動脈血中のベースエクセス(BE)の基準値 女性:-2.3~2.7 mmol/L
男性:-3.2~1.8 mmol/L
HCO3- 動脈血中の重炭酸イオンの基準値 24mEq/L

「ザックリ」説明

pHとは…

水素イオン濃度を表したもの

です。

医療分野でpHと聞いたら、

酸と塩基の指標だな

と想像できれば問題ありません。

 

基本的には「ピーエイチ」と発音しますが、「ペーハー」と言う方も多いです。

 

 

「シッカリ」説明

 

pHを理解しよう

pHはその液体の水素イオン濃度[H+]を示すものです。

pHと水素イオン濃度の関係は以下のように表すことができます。

pH = – log[H+]

この式を覚える必要は全くありません。

ここで理解して頂きたいのは

pHは単に水素イオンの濃度を表しているんだなぁ

ということです。

 

水素イオン(以下H+)は代謝により生成されたり、食物から摂取したりしています。

その量は毎日80mEq/L程と言われていますが、体液のH+濃度はわずか0.00004mEq/Lという恐ろしく小さな値で正確に保たれています。

値が小さすぎてこのままでは管理が困難なため、臨床ではpH(対数での表記)が用いられています。

<★挿絵:対数表記のちょっとした解説>

 

具体的な説明に入っていきますが、頭が混乱するかもしれませんので、以下にpHに関する用語を噛み砕いた表現で記載します。

わからなければ置き換えながら読んでみてください。

● pHが下がる、pHが酸性に傾く → 水素イオンが増える

● pHが上がる、pHがアルカリ性に傾く → 水素イオンが減る

 

人体でのpH

pHの基準値は、成人の動脈血でおおよそ7.35~7.45となっており、純水がpH7(中性)であることから、

動脈血中のpHはほんの少しのアルカリ性に傾いた状態

で保たれていることがわかります。

 

通常、人体で行われる代謝では酸素と水を使用してH+とCO2 が産生されており、これらは血液を酸性に傾けるため、本来であれば血液中のpHは酸性に傾きそうに感じます。

実際、体の細胞に行き渡った後の静脈血は、動脈血に比べて酸性に傾いていることが知られています。

しかし、人体のほとんどの細胞は動脈血がpH7.35~7.45の弱アルカリ性で正常に機能するため、人体には肺や腎臓、緩衝系といった酸性とアルカリ性のバランスを保つための機構が備わっています。

この酸性とアルカリ性のバランスのことを酸塩基平衡と言い、

崩れた酸塩基平衡を元に戻す反応を代償反応と言います。

 

酸塩基平衡は様々な臓器が関与している複雑なシステムであるため、一見して全身状態の指標となるpHは特に重傷もしくは急性の症例にて利用されます。

しかし、pHを見ただけでは全身状態の指標として使用することは難しいです。

なぜなら、pH単体では酸塩基平衡の異常をもたらしている原因が特定できないためです。

そこで用いるのが、CO2HCO3です。

この二つを確認することにより、酸塩基平衡が崩れるパターンを以下の四つに分けることができます。

  pH CO2 HCO3
呼吸性アシドーシス 低下↓ 上昇↑ 正常→
呼吸性アルカローシス 上昇↑ 低下↓ 正常→
代謝性アシドーシス 低下↓ 正常→ 低下↓
代謝性アルカローシス 上昇↑ 正常→ 上昇↑

アシドーシス」はpHが酸性に傾くこと、「アルカローシス」はアルカリ性に傾くことを意味します。

<★挿絵:アシドーシスとアルカローシス>

アシドーシスのアシドはアシッド(酸)のことで、アルカローシスのアルカはアルカリ(塩基)のことですね。

これらは、

呼吸が原因で酸塩基平衡の異常が発生する場合(呼吸性)と、

代謝が原因で酸塩基平衡の異常が発生する場合(代謝性)とが存在するわけです。

このように分類することで、ざっくりとした原因の特定が可能になります。

 

HCO3の働き

急に出てきたHCO3って何?と思われた方もいらっしゃるでしょう。

HCO3は「重炭酸イオン」のことです。

重炭酸イオンはH+と可逆的に結合する緩衝物質です。

難しく聞こえますが、一つずつ理解すれば至って簡単です。

下の式を見てください。

H+ + HCO3 ⇆ H2CO3 ⇆ CO2 + H2O

これはH+とHCO3が反応して、CO2とH2Oに変化することを示しています。

また、両方を指す矢印から想像できるように、CO2とH2Oからでも反応します。

一例として、H+が増える(pHが下がる)場合を考えてみましょう。

H+↑ + HCO3 ⇆ H2CO3 ⇆ CO2 + H2O

これは代謝性アシドーシスに当たる状態です。

この時、HCO3はH+の増加に伴い以下のように反応が進みます。

H+↑ + HCO3 → H2CO3 → CO2 + H2O

反応後は実際にはCO2は増加しますが、増加したCO2は呼吸により体外に排出されます。

結果、代謝性アシドーシスでは以下のような関係に至るのです。

  pH CO2 HCO3
代謝性アシドーシス 低下↓ 正常→ 低下↓

このように、H+の増加に対してpHを一定に保つ働きを「緩衝作用」と言い、例であげたH+の上昇に対してHCO3は緩衝作用があるため、「H+と可逆的に結合する緩衝物質」と言われています。

<★挿絵:pHが下がるというのはH+が増えているということです的な絵>

HCO3のは緩衝についてもっと詳しく知りたい方は「重炭酸緩衝系」をご覧ください。

 

また、代謝性の酸塩基平衡異常の場合、アニオンギャップという指標を用いてさらに細かく分類することができますが、pHの解説ではなくなってしまうので別の機会にお話します。

 

ここで紹介した方法で酸塩基平衡異常を探ることをTraditinal Approach(昔から伝統的に使っている手法という意味)と言いますが、それとは別の方法論としてStewart Approachというもの知られています。

アニオンギャップ、Stewart Approachなどを学べば、さらに理解が深まる思いますので、興味のある方はぜひ深掘りしてみてください。

 

 

まとめると

pHとは…

水素イオン濃度を表す指標

CO2、HCO3を合わせて確認することで、酸塩基平衡異常を把握できる

・その酸塩基平衡異常の種類は大きく4種類に分けられる

 

 

以上、最後まで読んで頂きありがとうございました。

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関連用語

・酸塩基平衡

緩衝作用

・重炭酸緩衝系

・代償作用

・アニオンギャップ

・アシドーシス

・アルカローシス