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医療での「心筋保護」について簡単に解説!

タイトル
間欠的投入の投与間隔 約20-30分
心筋保護液のカリウム濃度

約 16 [ mEq / L ]

※製品や組成によって異なる

血漿ラクテート濃度 0.56~1.39 [ mmol / L ]
 
ナース看護師

ドクター先生!

心筋保護 」って何ですか?

 

 
ドクター先生

心筋保護を説明するには、心臓の手術について少し話をしないといけないね!

 
ドクター先生

心臓は常に動いているのは知っているよね。

心臓の病気を治療するためには、 心臓を動かしたままでは難しい ものも多いんだよ。

そういった場合には、 心臓を止める必要がある んだ。

 

 
ナース看護師

そんなことをして大丈夫なんですか!?

 

 
ドクター先生

心臓手術の間は「 人工心肺 」と呼ばれる心臓の代わりになる装置に接続するんだ。

だから身体には血液が供給し続けることができるんだよ。

 
ドクター先生

でも、肝心の心臓に血液を流し続けると手術の邪魔になるから、心臓に血液を供給できない場合があるんだ。

この時に登場するのが「 心筋保護 」なんだよ!

 

 
ナース看護師

心臓を一時的に保護すること、と言うことですか?

 

 
ドクター先生

具体的には、

心臓に一定時間血液を流れなくても、細胞が壊れないように筋肉を保護すること

といったところかな。

 

 
ナース看護師

奥が深そうですね…

もっと詳しく心筋保護について教えてください!

 

 
ドクター先生

じゃあ詳しく見ていこうか!

「心筋保護」とは

心筋保護とは、

心臓に血液が供給されていない間、「心臓の組織を保護すること」

です。

心筋保護はいつ必要か?

では、心臓に血液が供給されない状況とはどのような時でしょうか?

結論からいうと、心臓(特に内部)を手術する時です。

心臓の内部を手術するためには、心臓を切開する必要があります。

しかし、心臓の内部は血液で満たされているため、そのまま切開しても血が吹き出して手術どころではありません。

血が吹き出す-

また、その血液は本来全身に送られるはずだったものですので、血液が来なくなった身体の組織は酸欠状態になってしまいます。

そこで、心臓の内部を手術する際には、心臓の内部の血液を減らし、全身に血液を送り出すことができる「人工心肺装置」という機械を身体に接続します。

これにより、血が吹き出すという問題と、酸欠になるという問題は解決されました

この状態であれば、心臓を切開すれば手術が可能なように感じます。

しかし、実はそう簡単には行きません。

人工心肺装置は心臓を出てすぐの大動脈というところから血液を送り出していますが、この血液は身体だけではなく、心臓の内部にも流入してきます。

血液の人工心肺による心腔内流入

この状態では最初の時ほどでは無いにしろ、まだ血液が邪魔で心臓の内部を手術することができません。

しかしこの問題は、送り出した血液が心臓に来ないように大動脈の一部をクリップのように挟むことで簡単に解決できます。

大動脈遮断

これで、人工心肺装置から送られた血液は心臓には入ってきません。

しかし、これでは別の問題が発生します。

このまま手術を進めると、心臓は深刻なダメージを受けて高い確率で動かなくなってしまいます

なぜダメージを受けるのでしょうか?

結論から言うと、心臓の組織が酸欠状態になってしまうからです。

心臓の血液は冠状動脈という心臓を出てすぐの血管から供給されています。

この血管は心臓にとても近いため、冠状動脈より心臓に近い場所をクリップのように挟むことはできません。

とすると、今度は心臓の組織に血液が流れず、心臓の組織が酸欠状態になってしまうのです。

冠動脈に血が流れない

この状態が長く続けば、もちろん心臓の組織は死んでしまいます。

例え組織が死んでおらず、手術後に再び血液が流れたとしても、長時間酸欠状態であった心臓は手術前のように動くことはできなくなってしまうのです。

これが、初めに出てきた「心臓に血液が供給されない状況」です。

心臓手術の初期ではこの方法*で手術を行なっていましたが、成績はあまり良くありませんでした

理由は先ほども説明した通り、酸欠による心臓へのダメージがとても大きかったためです。

この問題を解決するため、「心臓を止めておくこと」が考えられました。

日常生活の中でも、走っているよりも、座っている方が楽であることを思い浮かべてみてください。

心臓も同様で、常に動いている方が圧倒的にエネルギーを消費します

心臓を止めておくことで、必要とするエネルギーが少なくなり、酸欠から「心臓を保護する」ことが可能になるのです。

これを「心筋保護」と呼んでいます。

*大動脈の遮断と全身の冷却による単純遮断

心臓の動きを止めるには

心臓に栄養を届けるのは、冠状動脈と呼ばれる血管です。

この冠状動脈に「心筋保護液」と呼ばれるカリウムを多く含んだ薬剤を投与することで、心臓を一時的に止めることが可能です。

カリウムの濃度は細胞の動きに深く関わっており、血液のカリウム濃度を上昇させることで、心臓の筋肉が次第に動きにくくなっていき、ある程度の濃度に達すると停止します。

この心臓の筋肉が停まることを「心停止」もしくは「心静止」と言います。

この心臓の筋肉が止まる仕組みには、「膜電位」が関わっています。

心筋保護液の投与経路

心筋保護を行うためには、心臓を安全に停止させるための心筋保護液の投与が必須です。

冠状動脈の入り口から心筋保護液を注入する方法を

アンテ(Antegrade Delivery)

といい、逆に出口から注入する方法を

レトロ(Retrograde Delivery)

と言います。

また、2本の冠状動脈に対してそれぞれ一本ずつ注入する方法を

セレクティブ(Selective)

と言います。

アンテレトロセレクティブ

まとめると

 
ナース看護師

つまり、心筋保護は…

心臓を酸欠から保護することを指す

冠状動脈に心筋保護液を注入することで保護効果を得る

その投与経路は3種類存在する

と言うことですね!

 

 
ドクター先生

その通りだね!

原理的な部分はバッサリと説明せずに終わっているから、もっと深掘りしてみるとさらに理解が深まると思うよ!

 

 
ナース看護師

ちょっと勉強してみます!

 

 
ドクター先生

また分からないことがあったら遠慮なく聞いてね。

 

 
 
ナース看護師

分かりました!

ありがとうございます。