- 「線溶系」に関する基準値
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出血時間 1〜9 分
※測定方法による
APTT 27〜40 秒 PT 凝固時間:10〜13 秒
PT比:0.9〜1.1
PT活性:70〜140 %
フィブリノゲン 200〜400 mg / dL
FDP total-FDP:10 μg / mL未満
FDP-E:100 ng / mL未満
D-ダイマー LPIA:1.0 μg / mL未満
ELISA:400 ng / mL以下
今回は「線溶系」について解説するよ!
線溶系…ですか。
あまり聞きなれない用語ですね。
どういう意味なんでしょうか?
線溶系は
血管内で固まった「血液の塊」を溶かす経路のこと
だよ。
血管の中でも、怪我をした時みたいに血が固まることってあるんですか!?
そうなんだ。
血管の中が傷付いた時や、血管内に異物が入った時には血管の中でも血が固まってしまうんだよ。
血液の塊が血流に乗って全身に送られてしまうと、
脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な疾患に繋がる可能性があるんだ。
それで固まった血を溶かす「線溶系」の出番というワケですね!
もっと詳しく線溶系について教えてください!
じゃあ詳しく見ていこうか!
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線溶系とは
血が固まる経路を「凝固系」と言います。
血液の凝固は、血小板の凝集から始まり、最終的にフィブリンによる固定を経て血液が固まります。
血液が固まった時の塊を、「血栓」や「フィブリン塊」などと表現しますが、
これらの血液の塊を溶かす経路のことを「線溶系」
と言います。
線溶は繊維素溶解の略語であり、ここで言う繊維素と言うのは「フィブリン」のことを指しています。
凝固した血栓は、そのままでは脳梗塞や心筋梗塞の原因となるため、組織の修復が完了するとともに除去されなければなりません。
このため、血管内に形成された血栓はこの「線溶系」によって速やかに分解されるのです。
フィブリンを含む、血液の塊を形成する流れに関しては以下をご覧ください。
「血液凝固」に関する基準値 血小板 13 ~ 37 [ 万 / μL ] フィブリノゲン 180 ~ 320 [ mg / dL ] ACT 90 〜 120 秒 APTT 20.0~40.0 秒 PT 10.0 […]
線溶系の主要となる因子はプラスミンと言うタンパク質です。
結論として、線溶系と聞いた時には
「プラスミンによって血液の塊を除去する経路のことだな」
と理解できれば問題ありません。
プラスミンの生成
血漿のタンパク質の中には「プラスミノゲン」という物質を含んでおり、これが活性化されると「プラスミン」という物質に変化します。
プラスミノゲンは血液の塊を溶かす機能を持っていませんが、ひとたびプラスミンに変換されると、フィブリン繊維だけではなく、その前段階であるフィブリノゲンやそれらを形成する因子をも分解することで、血液の塊を分解してしまいます。
フィブリンの前段階であるフィブリノゲンを分解することを「一次線溶」と言い、フィブリンを分解することを「二次線溶」と言います。
プラスミンによる血液の塊の溶解は、生体の中では無くてはならない機構ではあるものの、時には凝固能力の低下を引き起こします。
線溶系の流れ
生体内で血液の塊が形成されると、大量のプラスミノゲンが血液の塊に取り込まれます。
この状態では取り込まれたプラスミノゲンはプラスミンに変換されず、血液の塊を溶かす力も発揮されません。
傷害を受けた組織は、血液の塊に含まれるプラスミノゲンをプラスミンに変換するための因子をかなりゆっくりと放出します。
これにより、傷害部位を覆っていた血液の塊が出血を止めた後に、プラスミノゲンはプラスミンに変換され、不要な血液の塊を溶かしていき、最終的には血液の塊が完全に除去されるのです。
ちなみに、プラスミノゲンをプラスミンに変換する因子のことを「組織プラスミノゲンアクチベータ」と言います。
難しい単語に感じますが、要は「組織から出たプラスミノゲンを活性化(アクチベート)する因子」と言うことです。
組織プラスミノゲンアクチベータは「t-PA」と表記されることが多いです。
t-PAは心筋梗塞や脳梗塞が発生した直後であれば急速投与することで血栓溶解効果を得ることもでき、急性期再開通療法としても用いられます。
「tPA」に関する基準値 出血時間 1〜9 分 ※測定方法による APTT 27〜40 秒 PT 凝固時間:10〜13 秒 PT比:0.9〜1.1 PT活性:70〜140 % フィブリノゲン 200〜400 […]
線溶系の評価
線溶系がどのように働いているのかを評価するために使用するのは「FDP」と「Dダイマー」と言う指標です。
医療従事者の方なら一度くらいは目にしたことがあるかも知れません。
英語三文字で書かれる単語は何かと警戒してしまいますが、安心してください。
FDPはフィブリンもしくはフィブリノゲンを分解した時に出る物質です。
もちろん、この二つを分解したのは先ほどの章で説明したプラスミンです。
つまり、生体内でどれだけの凝固と線溶が起こっているのか、を表している値なのです。
一方D-ダイマーですが、これはフィブリンを分解した時に出る物質です。
FDPはフィブリノゲンとフィブリンの両方を反映するのに対し、D-ダイマーは血液の塊を形成した後のフィブリンのみを反映します。
D-ダイマーはFDPの一部と考えて問題ありません。
まとめると
つまり、線溶系は…
・血管内で血液の塊を溶かす経路のこと
・溶かす物質は「プラスミン」
・溶かされる物質は「フィブリン、フィブリノゲン」
・線溶系の評価には「FDP」と「D-ダイマー」を用いる
ということですね!
その通りだね!
これで線溶系に関してはバッチリだね。
また分からないことがあったら遠慮なく聞いてね。
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