医療での「PCPS」についてわかりやすく簡単に解説！

「PCPS」に関する基準値

「ザックリ」説明

「シッカリ」説明

PCPSとは？

PCPSはPercutaneous CardioPulmonary Supportの頭文字を取った言葉です。

難しく感じますが、簡単に言うと

「皮膚を介した（percutaneous）

「心臓と肺の（cardiopulmonary）

「補助（support）」

という意味です。

これは、日本でのみ使用される名称であり、PCPSの役割を端的に表しています。

PCPSの役割は、心臓と肺の機能が低下した際にその代わりとなることです。

心臓や肺が「もう無理！生命を維持できない〜！」となった時に、PCPSを導入することで危機的な状況から生命を維持することができます。

しかし、心臓や肺を治すためので魔法の道具というわけではなく、あくまで

「心臓、肺が機能を果たせない間の代替装置」

ですので、そこは勘違いしないようにしましょう。

PCPSの原理

名称がわかったところで、まずは簡単な原理を理解していきましょう。

PCPSは、心臓や肺の機能が低下したより、命に関わる可能性があると判断された場合に用いられる「補助循環装置」の一つとして知られています。

心臓の機能のおおよそ80〜100％を補助することが可能です。

心臓の力が20％以下に落ちたとしても、全身に血液を届けて酸素を供給できるということですね。

ざっくりとした原理は、以下の通りです。

①体内から大量の血液を抜く

②肺の機能を代行する装置で血液に酸素を加え、二酸化炭素を排出する

③心臓の機能を代行する装置で、抜き取った血液を全身に送り出す

体から大量の血液を抜き出す工程を「脱血」と言い、逆に全身に送り出す工程を「送血」と言います。

脱血や送血は「カニューレ」という管のような道具を、皮膚から血管の中に挿入して行います。

検診などで針を刺して血液を採取した経験があると思いますが、そのすごく太い版だとイメージして頂けると分かりやすいでしょう。

PCPSはこの「カニューレ」と「人工肺」、そして「遠心ポンプ」で構成されます。

カニューレを介して体から脱血された血液は、まず遠心ポンプにより圧力と言う形でエネルギーを与えられます。

遠心ポンプは心臓の代わりをしている、といった方が想像しやすいかも知れません。

その後、人工肺を経由することで血液に酸素を付加し、二酸化炭素を排出します。

これは、人体の中で肺が静脈血を動脈血に変換する原理と同じです。

そして、動脈血に変換された血液を体に送り返すまでが、PCPSの一連の流れとなっています。

この一連の流れと構成は、心臓手術で使用される「人工心肺装置」とほぼ同様です。

しかし、人工心肺装置には存在する「リザーバ」と言う血液を貯めることができる物品がPCPSには存在しません。

血液を貯める「リザーバ」は、体を循環する血液の量を調節できるという大きな利点がありますが、血液の流れが淀んでしまい、血栓形成の原因にもなります。

血栓は心筋梗塞や脳梗塞の原因になるだけではなく、人工肺の寿命にも影響を与えるため、長期的な利用を想定したPCPSにはリザーバは用いられていません。

PCPSの構成物品

ECMOとPCPSの違いは？

PCPSと同じ意味で使用される言葉として「ECMO」と言うものがあります。

結論から言うと、ECMOとPCPSは同じものを指していると思って問題ありません。

しかし、ECMOの中にも種類があり、その一部はPCPSとは全く異なる治療のことを指す場合があるため、注意が必要です。

そもそもECMOとは「Extra-Corporeal Membrane  Oxygenation」の頭文字を取ったものです。

こちらも簡単に訳すと、

「体の外の（extra-corporeal）」

「膜を使った（membrane）」

「血液の酸素化（oxygenation）」

という意味になります。

PCPSで解説した、人工肺の機能を表した言葉ですね。

私たちに耳馴染みのあるPCPSと言う単語は、海外では使われておらず、ECMOと呼ぶのが一般的です。

ECMOは、大きく2種類に分けることができます。

心臓単体もしくは、心臓と肺の両方を補助する目的として使用する「V-A ECMO」と、

肺の補助を目的に使用する「V-V ECMO」です。

ここでの「V」は静脈のことを表し、「A」は動脈のことを指しており、脱血と送血の部位を表しています。

V-A ECMOであれば「静脈（V）脱血」＋「動脈（A）送血」、

V-V ECMOであれば「静脈（V）脱血」＋「静脈（V）送血」といった形ですね。

ほとんどの場合、ECMOはV-A ECMOを指していますので、ECMOと呼ばれた時には「あ、PCPSのことか」と思って問題ありません。

しかし、V-V ECMOはPCPS、V-A ECMOとは目的が異なる治療ですので、注意が必要です。

現場でのECMO、PCPSの呼称について

ひと昔前までは、ECMOはV-V ECMOのことを指し、PCPSはV-A ECMOのことを表していることが多かったですが、近年では世界標準に合わせて、VA-ECMOはPCPSもしくはECMO、V-A ECMOと呼び、V-V ECMOはそのまま呼称することが普及してきています。

ここ数年注目された、COVID-19による呼吸不全においての治療に用いられたECMOは、多くが後者のV-V ECMOを行っています。

COVID-19により酸素を交換しにくくなってしまった肺に代わり、一時的に体外の膜型人工肺で肺の代わりをすることで、自己の肺を休めて回復を待つという目的で使用された形です。

今回はPCPS（V-A ECMO）の解説ですので、V-V ECMOの詳説については以下をご覧ください。

→医療での「V-V ECMO」について簡単に解説！

PCPSの適応

PCPSの適応は以下のようなものが挙げられます。

・心肺停止状態

・心原性ショック

・難治性心不全

・LOS（術後低心拍出症候群）

・薬剤抵抗性難治性不整脈

etc…

適応範囲が広いので省略しましたが、これらは「この疾患にはPCPS!」と言った形で覚える必要はありません。

というより覚えない方がいいかも知れません。

PCPSは特定の疾患ではなく、

「このままでは循環を維持できないから、PCPS！」

という形で導入されることが多いためです。

適応となる疾患を覚えるというよりは、適応となる可能性がある状況を考えておく方が実践的です。

PCPSには多くの合併症や注意すべき点があり、管理には細心の注意を必要とします。

それらの管理や、ここの物品に関する個々の詳細は別途解説を設けますので、そちらを参照ください。

→ECMOの「遠心ポンプ」について

→ECMOの「人工肺」について

→ECMOの「カニューレ」について

→ECMOの「合併症」について

まとめると